こんにちは。Zianser編集部です。
SES業界で「商流が深い」という問題が語られることがあります。エンドクライアントと実際に働くエンジニアの間に3〜4社が挟まる構造のことですが、これが実際にどんな問題を引き起こすのか、現場で目撃した実例をもとにお伝えします。
3次請けエンジニアに起きた「情報断絶」
ある大手金融系システムのプロジェクトに参画していたエンジニア・Cさん(40代、インフラエンジニア)の話です。
Cさんは当時、以下のような商流で案件に参画していました。
エンドクライアント(金融機関)
↓
1次下請け(大手SIer)
↓
2次下請け(中堅SI)
↓
3次下請け(Cさんの所属会社)
↓
Cさん
参画から数ヶ月後、Cさんから私に連絡が来ました。
「プロジェクトの仕様変更があったらしいんですが、自分には何も情報が来ていなくて、知らないまま旧仕様で作業を続けていました。後から上の方に指摘されて、やり直しが発生してしまいました」
商流が深いと「伝言ゲーム」が起きる
この問題の根本原因は、商流が深いほど情報の伝達経路が長くなることです。
エンドクライアント側で仕様変更の情報が出ても、それが1次→2次→3次と順番に伝わっていく間に:
- 遅延が生じる(各社での確認・承認に時間がかかる)
- 情報が変形する(要約・省略・解釈の差)
- 情報が止まる(どこかで共有が漏れる)
Cさんのケースは3番目「情報が止まる」に当たりました。2次下請けから3次下請けへの連絡が、担当者の手違いでなされていなかったのです。
単価にも影響する商流の深さ
情報断絶の問題だけでなく、単価にも大きな影響があります。
同じスキルのエンジニアが、商流の深さによってどう単価が変わるかのイメージは以下のとおりです。
| 商流 | エンドクライアントが支払う単価 | エンジニアが受け取る単価 |
|---|---|---|
| 直請け | 100万円 | 85〜90万円 |
| 1次下請け | 100万円 | 75〜85万円 |
| 2次下請け | 100万円 | 65〜75万円 |
| 3次下請け | 100万円 | 55〜65万円 |
(あくまでイメージです。実際の数値はケースによって大きく異なります)
各社がマージンを取るため、商流が深くなるほどエンジニアへの還元率は下がります。
商流の深さを許容するかどうかの判断基準
商流が深いこと自体が絶対にダメなわけではありません。私が考える「許容できるかどうかの判断基準」は以下のとおりです。
許容できるケース
- 単価が相場より明らかに高い(深い商流のリスクを補う水準)
- 現場のコミュニケーションが直接行われる(メインの調整はエンドクライアントと直接できる)
- 長期・安定稼働が見込める(リスクより安定を優先する場合)
許容しにくいケース
- 単価が相場より低い(深い商流のデメリットがそのまま負担になる)
- 仕様変更が多い・プロジェクトが流動的(情報断絶のリスクが高い)
- 責任の所在が曖昧(何かあったとき誰に相談すればいいかわからない)
まとめ:商流の深さを「見えない問題」にしない
SES業界では、商流の深さがエンジニアの働き方に与える影響が、思った以上に大きいです。
営業として大切なのは、商流の深さをエンジニアにきちんと開示し、リスクを理解した上で参画を判断してもらうことだと思います。「知らなかった」という状況を作らないことが、信頼関係の基本です。