こんにちは。Zianser編集部です。
「フルリモートで働けますか?」──コロナ禍の全盛期には、エンジニアがBP企業に真っ先に確認していたこの質問が、今では少し勝手が変わってきています。現場で感じた「空気の変化」をお伝えします。
ピーク時の熱狂と、その後の静けさ
2020〜2022年のコロナ禍で、SES業界は急速にリモート対応を迫られました。それまで「常駐が当たり前」だった業界が一変し、「週5フルリモート」「完全在宅」の案件が続々と生まれました。
エンジニア側の反応は明快でした。「リモート可」の案件には問い合わせが殺到し、「常駐必須」は敬遠される。 単価が同じでも、リモート可否が採用の決め手になる時代が続きました。
しかし2023年後半から、空気は少しずつ変わり始めました。
現場で感じた「出社回帰」の波
変化のきっかけは、いくつかのエンドクライアント企業が「週2〜3出社」を条件に加え始めたことです。
私が担当しているある金融系のプロジェクトでは、2023年末から「チームの一体感を取り戻すため、月10日以上は出社してほしい」という条件が追加されました。それまでフルリモートで稼働していたエンジニアのうち、数名が「条件が合わない」として離脱を選びました。
このケースは決して特殊ではありません。
出社回帰の背景にある理由を、エンドクライアントからの声も含めてまとめると:
- チームビルディングの難しさ: オンラインだけでは新人の育成や一体感の醸成が困難
- セキュリティ上の懸念: 機密性の高いプロジェクトではオンサイト勤務を必須にするケースが増加
- 生産性への疑問: 「リモートで本当に効率が上がっているのか」という経営判断
- コスト最適化: オフィスのスペースを有効活用したいという意向
数字で見るリモート案件の変化
営業現場での体感として、以下のような変化を感じています(あくまで体感値です)。
| 時期 | フルリモート案件の割合(体感) | 変化 |
|---|---|---|
| 2022年 | 約60〜70% | ピーク |
| 2023年 | 約40〜50% | 減少開始 |
| 2024〜2025年 | 約25〜35% | 安定した減少 |
| 2026年(現在) | 約20〜30% | 緩やかな減少傾向 |
フルリモートが完全になくなったわけではありませんが、「週3リモート以上が条件」というエンジニアが増える一方で、案件側の受け皿が縮小しているのが現状です。
特にエントリーレベルの案件でフルリモートが難しくなっており、若手エンジニアへの影響が大きくなっています。
エンジニアのミスマッチが増えている
この変化で最も困るのは、コロナ禍にSES業界に入ったエンジニアです。
「リモートが当たり前」として働いてきた方々の中には、出社に抵抗感を持つ方も少なくありません。案件を紹介しても「週2出社は難しい」と辞退されるケースが増えてきました。
一方、エンドクライアント側は「対面コミュニケーションを重視したい」「セキュリティ上の理由でオンサイト必須」という要件を強めています。
この需要と供給のミスマッチが、SES営業にとって現在最も頭を悩ませる課題のひとつです。
ミスマッチの具体的なパターン
パターン1: 地方在住エンジニア × 出社必須案件
地方に引っ越した・地方出身のエンジニアが、出社必須案件を受けられなくなるケース。特に東京圏以外に在住している方に多い。
パターン2: 家族の事情 × フレキシブルでない勤務形態
子育て・介護などの事情でリモート必須となっているエンジニアが、出社回帰の波で案件を探しにくくなるケース。
パターン3: 生活コスト上昇 × 収入減のリスク
通勤費・外食費が増えることで実質的な手取りが減少し、単価アップ交渉が必要になるケース。
今、SES営業として何をすべきか
こうした状況の中で、私が実践していることをいくつか共有します。
1. エンジニアのリモート条件を詳細に把握する
「リモート希望」だけでなく、「週何日まで出社可能か」「通勤圏はどこまでか」「自宅作業環境はどうか」を最初にヒアリングするようにしました。曖昧なまま案件を紹介すると、後から辞退されるケースが多いためです。
ヒアリング時の確認事項:
□ 週何日まで出社可能か
□ 通勤可能なエリア・最寄り駅
□ 自宅のネット環境・作業環境の状況
□ コアタイムは必要か
□ 出社の条件が変わった場合どうするか
2. ハイブリッド案件を積極的に開拓する
完全リモートも完全常駐も難しい中、「週2〜3出社・残りリモート」という中間的な案件を積極的に探しています。双方にとって現実的な着地点になるケースが多いです。
BPへの配信メールにも「ハイブリッド案件(週2出社可)のみご提案受付中」と明示することで、条件が合うBPからの返信率が上がっています。
3. エンジニアとの対話を増やす
条件の変化に対してエンジニアがどう感じているかを知るため、案件参画中も定期的に近況確認の連絡を入れるようにしました。不満がたまる前に対話できると、離脱を未然に防げます。
月1回の定期連絡を習慣にすることで、エンジニアの状況変化(転居・家族の事情・スキルアップの意欲など)をいち早く把握できます。
4. リモート率の高いセクターに注力する
すべての案件でリモートが減っているわけではありません。以下のセクターはまだリモート率が比較的高い傾向があります。
- スタートアップ・メガベンチャーのWebサービス開発
- グローバル企業のITプロジェクト
- SaaS企業のプロダクト開発
- クラウドインフラの構築・保守
これらのセクターに強いBPとの関係を深めることが、リモート案件を継続的に提供できる体制づくりにつながります。
まとめ
フルリモート案件バブルの終焉は、SES業界に「本当の意味での条件マッチング」を突きつけています。数が多ければどれかに当たるという時代は終わり、エンジニア個人の状況とニーズを深く理解した上で案件を提案する営業力が、これからの差別化の鍵になると感じています。
リモートか常駐かという二項対立ではなく、エンジニアそれぞれの生活スタイルに合ったハイブリッドな働き方を一緒に設計できるSES営業が、今後求められていく存在だと思います。
この変化を、自分たちのビジネスをアップデートするきっかけとして捉えていきたいと思います。